宿屋で駅でもあったパブ:ジョージ・イン
ロンドンはすっかり秋めいてきました。秋だから味わい深く、ひっさしぶりにパブのお話をしようと思います。
「ロンドン橋おちた、おちた~」
あの歌に歌われたロンドン橋のすぐ南に、「George Inn ジョージ・イン」というパブがあります。
たぶん、11世紀にはあっただろうって言われてるちょー古いパブです。
「パブ? お酒を飲むところね」って、早ガッテンしないでね。
だって、パブってものすごくいろいろな役割があって、しっかり社会に根付いてたんだから。
名前に「Inn」がついていることからもわかる。
つまり、ここはInn=宿屋であり、なんと駅でもあったの。
昔むかし、ロンドンには橋がひとつしかありませんでした。
カンタベリーとかブライトンとかイングランドの南の方に行くには、必ずそのロンドン橋を渡んなきゃなんない。
旅支度をした旅人たちは、まずロンドン橋を渡り、この宿に一泊します。
翌朝、そこに集まってきた馬車にのって、長ーい旅に出るのです。
だからね。ジョージ・インは車道からちょっと奥にはいってるの。
で、その前は、かつて馬車が集まったスペースだったの。
今は、南面にしか建物がないけど、昔は、そのスペースを囲むように三面建物があったんだって。
写真の建物、平坦でない床が歴史を感じさせるでしょ?
旅人たちは、そのパブで飲みながら、情報交換したり、思い出話とかしたんだね。
そうそう、このパブが舞台ではないけど、
英国文学の父といわれるチョーサーの「カンタベリー物語」は、
カンタベリーに巡礼にいく旅人たちのお話が編纂されたものなんだよ。
ロンドン橋の南にあったパブで、旅路から帰ってきたり、これから行く巡礼者たちが、お互いに旅の話をしあったんだ。
そういう遍歴を語らう場は実は情報交換の場でもあったって、ことよね。
英国文学でいえば、「クリスマス・キャロル」を書いたヴィクトリア時代の作家ディケンズは、ジョージ・インの常連でした。
確たる証拠はないけど、シェークスピアもここに通った可能性大。 だって、彼の劇場グローブ座は目と鼻の先。ここが当時から有名なパブだとしたら、当然有り得る話です。
歴史的に重要なこのパブ、今はナショナル・トラストによって守られています。
でもさ、それが今も現役のパブっていうのがいいんじゃない?
ちなみに、「ジョージ・イン」のジョージは、イングランドの守護聖人、セント・ジョージ。
いつも白い馬に乗って、ドラゴンを退治するイメージで、登場します。
そんなこんなを思い浮かべながら飲めば、ビールがさらに味わい深くなる。
秋だと、さらに味わい深くなる。
と、無理やりこのブログの最初につなげちゃいましたが・・・
とにかくだ。 いつでもどこでも、美味いビールは美味い。 でもって、ここのFish & Chips はなかなかいけます。 はい。
(基本情報)
The George Inn
住所:Yard Borough High Street, Southwark, London, SE1
最寄り駅:ロンドン・ブリッジ
オープニング時間: 月~日の11時から23時 (でも、日曜日休みだったこともあり)
http://www.traditionalpubslondon.co.uk/georgesouthwark/
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