イラク女性に展示をガイドされた:ジェレミー・デラー展
展示ギャラリーの中心に置かれた鉄の塊、元の形を留めないほどにクラッシュし、焼け焦げた車両。
(c)Guadian
と、彼女のお話は続きます。
ところが、わたしのほうは、このイラク女性が一体誰なのかが気になってしかたありません。
そのうちに、彼女が居合わせた来館者でもなければ、館のスタッフでもなくて、
部屋の片隅にはソファがおいてあり、テーブルの上にはイラク戦争に関するパンフレットや写真集があります。
いずれにしても、これが「美術館」という場でなければ、街角の反戦キャンペーンだと思われても、ちっとも不思議ではない。しかし、これはロンドンのヘイワード・ギャラリーで行われている、コンテンポラリー・アート展なのです。
デラーは、芸術活動のはじめから「アート」の定義に対して真正面から取り組んできました。
そしてわたしたちの「鑑賞」行為に対する問いかけとも、自然に繋がっていきます。
この作品が、ロンドンの帝国戦争博物館に置かれていた時には、違った意味が形成されたに違いありません。
正直いうと、もう一度、同じ作品を見たいとは思わない。一度見れば、言いたいことはわかったと折りたためてしまう(デュシャンやウォーホールもそう)。
あるトピックについて違う角度から考えさせようとする。
そのアプローチには興味を覚えるし、これからも見守っていきたいアーティストだと、思うのです。
Jeremy Deller at Hayward Gallery ~13.05.2012
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