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大英博物館で「春画展」をみて誇りに思ったこと

「春画」-このタイトルに興味をもった皆さんは、春画とは何かもうご存知だろう。

日本なら、今でも秘められた絵である。実は、私の父も持っていた。でも、金庫に隠されて、わたしら子ども目に触れることはなかった。

その春画が、この秋、堂々、世界に冠たる大英博物館で公開されている。

いわずもがな、多くの人々に鑑賞してほしいとの大ミュージアムの望みからである。

-先日、見学をおえて、ほんとうにそのとおりだと思った。

この展示を見て、個人的に思ったこと四つ。

一つ。

わたしにとって、春画といえば、北斎や広重ら有名な絵師たちも手がけた江戸期の版画という認識だったけれど、

実はなんと17世紀まで遡ること、そんな長い歴史があることを、今回はじめて知った。

色絵刷りの巻物 (当時、版画という技法はまだ確立されていない)に、高貴な方々の、愛のシーンがまざまざと描かれている。

すごいと思ったのは、普通、絵巻ものは、絵と言葉が融合された表現だけれど、展示でみた多くは、いわば愛のハイライトシーンで、絵だけが描かれていて、言葉がないこと。

まるで、ヒッチコック映画である!

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ふたつ-性に対する日本人のおおらかさ。

おそらく、同じシーンを19世紀の西洋が描いたなら、

もっと暴力的になるか、さもなければ、卑猥で後ろめたい事として表現されたことだろう。

もちろん、日本でも、江戸も後期になれば、次第に春画に対してタブー視がなされるようになったという。

だが、ひとつの作品のなかで表される、恋人たちの愛の営みが、なんと美しくリラックスしていることか。

彼らの表情もさることながら、わたしは、衣服の紋様や襞の美しさ、そこに包まれる肉体の白さや線の美しさ、そして、もっとも中心たる恋人たちの接点を描いた入念さが、みごとなハーモニーをつくっていることに、目をみはった。そして、それによって表現される、恋人たちの互いのとろけるような親密さ。

また、展示には、同性愛者たちの、リラックスした愛のシーンもたくさん紹介されていた。

そう、あまり知られていないけれど、少なくとも江戸初期の日本社会は、そのような性の多様性におおらかであった。

三つ。

どのような場でそれを観るかで、受け止め方がずいぶんと違うだろうこと。

わたしが、今回、春画というものを上のように見ることができたのは,ひょっとしたら、これが、ミュージアムという場だったからかもしれないと思う。これが、もし、もっとプライベートで閉鎖的な場だったら、受け止め方はずいぶん違ったのではないか。

わたしが見に行ったときは、大英博物館のひとびとは、結構、中高年の男女が多かった。彼らはどのように観たのかしら?

いずれにせよ、作品というものは、それを観る環境で受け止め方が、ずいぶんと違うことを、今回、改めて考え直した。

 

四つ。

この展覧会のハイライトは、北斎の有名な絵、美人と蛸の性交を描いたものと、

歌川国芳の女性器をものすごいクローズアップで描いたものだ。

前者は、エキスタシーの女性のすごい濃厚な表情が息を飲まんがばかりで、とても印象深いものだった。

さらに、わたしが驚いたのは後者。まず、そのような対象に迫るものを、この日本の画家が挑戦していたなんて、まったく知らなかった。

それをみて、ついつい、わたしは、クールベの「世界の始まり」と題した、女性器のクローズアップの絵画(オルセー美術館に展示されている)

を思い出した。

が、クールベとはまったく、違うのだ。

国芳のほうは、もっともっとユーモラスで、リラックスしている。同じ対象を捉えながら、社会主義者であったクールベのような深刻さは、微塵も感じられない。

それでいて、ちゃんと、絵としてのコンポジションが深く考えられている。まさに、絵師である。だから、ピカソもビアズリーも魅了されたのだ。

ところで、大英博物館はこの展示を日本に持っていって、どこかのミュージアムで展示したいと、ずいぶん探しまわったらしい。

ところが、本国、日本のミュージアムは、どこもそれを受け入れられなかった。(すくなくとも今の時点では)

日本の社会がもっていた、あの性に対するおおらかさは、今はないのだろうか。

とにもかくにも、この春画展をみて、久しぶりに日本の文化の深さに、不思議な誇りをもったわたしです。


 

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