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「オランピア」が見たもの:マネ展@ロイヤルアカデミーオブアーツ

マネが描く人々は、どことなく虚ろな目をしている。
最初にそれに気付かせてもらったのは、 たまたま仕事で、精神科医の方をロンドンのコートルード美術館にご案内したときだった。

あの「フォーリー・ベルジュールのバー」を見て、彼はこういうのである。

「この女給さん、周囲から自分を消していますね。 世の中には、こういう人っているんですよ。」

確かに、パリのバーの喧騒から、黒衣のこの女性だけが浮いている。 まるでヒッチコック映画の手法だ。
照明、匂い、タバコの煙、音楽、人々の歓声・・・はじめは、バー全体の賑やかで華々しい様子を映し出し、 カメラがある女性を捉えると、そこにズームインしながら、周囲の様子はぼやけ、音も消えていく。

そこに、近代の都会に住むひとりの女性の孤独が浮き彫りになる。
また新しい発見をさせてもらった。
だから、絵を見ながら会話をするのは楽しい。

先日、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツでやっている 「Manet : Portraying Life」を観に行って、 そこに登場する多くの人々の目にも、そんな虚ろさが浮かんでいるのが見て取れた。

妻の連れ子のレオンも(彼が着ている服の黒の美しいこと!) 詩人マラルメも、とらえどころの無いまなざしをもっている。
そのまなざしは、彼らの心の内を探るようにわたしたちを誘うのだ。

そして、ふと思う。これは、ひょっとしたらマネが社会に向けたまなざしなのではないかと。

最後の部屋は、マネが若い頃からモデルにしたVictorine Meurentのコーナーになっていた。

Meurentは、あの名作「オランピア」や「草上の昼食」を含め7作に登場した、モネのお気に入りのモデルだ。
このギャラリーには、彼女が18歳のときに描かれたという正面からの肖像画や「ストリート・シンガー」、 最後にモデルになった「列車」(ワシントンのナショナルギャラリーから)が並んでいる。

どの作品もそれぞれのテーマがありセッティングがあるのだが、 いつも彼女の虚ろな目に吸い込まれてしまう。
そこに急速に発展する近代という時代(バーや列車に象徴されるような)と個人のギャップがみえてくる。

彼女は画家としてもサロンで入選する(マネが落選したときに)など活躍したのだが その後、パリを離れ、名前を変え、アルコールと貧困の中で生涯を閉じたという。


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