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ドロシーの赤い靴:ハリウッド・コスチューム展@V&A

はっきりいってハリウッド映画は嫌い。
だから、ロンドンのヴィクトリア&アルバート・ミュージアム(V&A)での「ハリウッド・コスチューム」展にも、あまり触手が動かなかった。
V&A館内にある美術図書館に行った折に、ついでだから行ってみようとしたこともあったが、いつもチケットオフィスに長蛇の列ができているのをみて、ますます引いた。
先日また図書館に行ったら、ことのほか空いていたので、えいっとチケットを買った。
それが面白いのである。

ハリウッド映画かよって馬鹿にしているけれど、いやそれなりに歴史もあれば、深みもある。
それなりに世界を騒がすには、ちゃんとわけもある。
昔は数々の名作を世に出したのは確かだし、今だって世間を騒がす作品を生み続けている。
だれもが知っているーおそるべきアメリカ文化だ。
だから、どんな世代も、インドやイスラム圏からの移民も、アメリカ嫌いのイギリス人も、ハリウッド嫌いのわたしみたいなひねくれモノも、いくつかの作品はちゃんと見ている。
つまり、だれもがこの展覧会に共感できる部分をはじめからもっているのである。
展覧会の成功に、このことの意味は大きい。

しかも、なじみの作品に登場したコスチュームをマジかでみることができるのだ。
映像の中ではわからなかった実際の大きさや、質感や、微妙な色合いが手に取るようにわかる。
たとえば、チャップリンが着た浮浪者の衣装を見て、ああ、やっぱり小さい人だったんだなとか。
「風とともに去りぬ」のスカーレット・オハラの衣装はたっぷりドレープを施した光沢のある素晴らしいドレスで、衣装にも金がかかってたんだなとか。
最近のでは、「パイレーツ オブ カリビアン」や「アバター」の衣装とかもあった・・・映画、観てないけど。
3D映像を駆使した「アバター」はヴァーチャルだからこそ、その衣装は自然素材を使った手の込んだエスニックなもので、なるほど、リアリティをそういう細部で表現するのだと会得した、ような気になった。

もうひとつ面白いのは、展示の主体である本物のコスチュームと映像をうまく利用していることだ。
一点一点のコスチュームの頭の部分には、小さな映像があってそこにそれを着用した俳優たちの顔が映りこんでいる。それも静止画像ではなくて、しばらく見ていないとわからないほどゆっくり動いている。
だから、そこにあるのは映画作品から切り離されたただの展示物ではなくて、オリジナルの映画の登場人物と結びつけながら、衣装のディテールを楽しめるようになっている。 

もちろん、展示背景に映画の関連シーンをもってくるなど、展示の常套手段も使っていた。
展覧会の協賛に「サムソン」がはいっている―なるほどね。

展示会場全体で、もっとも興味を引かれたのは、中間あたりにあったコーナー。
ここでは、大きな机があって、その上に現のコスチュームや映画の映像とかがあるのだけれど、
隣接する椅子に、さも、そこに腰掛けているかのように、それを着た俳優や、衣装を作ったデザイナーあるいは映画監督などのインタビュー映像がある。彼らは、その衣装をめぐって会話をしている。
まわりには、同じような空いた椅子があり、来館者も座ることができる。
つまり、わたしたちもその会話のなかに入り込めるような、気の利いた設定になっているのだ。
(もっとも、あんまりに混んでいたら、それもムズカシイだろうけど。)

例えば、ヒッチコック作品の「鳥」で、メラニーが着ていたシンプルな緑のスーツが展示されており、
椅子には、メラニーを演じたティッピ・ヘドレンと、衣装を担当したデザイナーがそのスーツにまつわる話をしている。そこに座って耳を傾けながら、衣装というものが、役作りの中、いや映画作り全体の中で、どんな役割を果たすのか、それに対してデザイナーはどんな挑戦をするのかが理解できていくってわけ。

メリル・ストリープやロバート・デ・ニーロは、ハリウッド映画きっての演技派俳優として有名だけど、
様々な役を演じるときに彼らが着たコスチュームがずらーっと並んでいるコーナーもあり、興味深かった。
「タクシー・ドライバー」「レイジング・ブル」「カジノ」「フランケンシュタイン」・「サッチャー鉄の女」「ママ・ミアー」「愛と悲しみのはて」・・・
映像のなかで彼らもインタビューにこたえており、役作りをしていく過程で衣装がどんなに重要か、その役作りが映画の話をいかに肉付けしていくかなどの話をしてくれる。
ふと、こういうセッティングって、ミュージアムの展覧会だからこそできることなんだよな、と思った。

最後の部屋は、ハリウッド映画の名作オンパレードという感じ。
その生産力や世界に与えた影響たるや・・・。
そこに、おとうさんと連れ立った小さな男の子がいたのだけど、
まわりには大人たちが立ち並んでいて、面白くもなんともないただの服をじーっと見てて、ちっとも動かなくて、つまらなそうだった。
そしたら、その子が上を見て、急に声をあげた。
「ねえ、パパ、あそこ、スーパーマン」「あれは、バットマン」「あっちはスパイダーマンだー」(^∀^)
そのキャラクターたちは、天井に浮かんでいたり、壁に張り付いていたり、暗い展示場に潜んでいて、大人たちは見過ごしていたのである。
会場で笑いがおきたのは言うまでもない。
ーおそるべしハリウッド。てか、V&A。

2013年1月27日まで
V&Aの Hollywood Costume 公式ページ


 

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