装飾美術の大御所
ヴィクトリア&アルバート美術館は「V&A」と呼ばれ、イギリスでも大変親しまれています。
このミュージアムは装飾美術では世界最大級の美術館なのです。
陶芸や金銀細工、ステンドグラスの工芸から、ファッション、デザイン、彫刻、絵画・・・
コレクションの数たるや、なんと400万点以上!
V&Aについても、既にたくさんの情報があるので、ここではちょっと裏話をお伝えしましょう。
ヴィクトリアとアルバートって誰?
美術館には人の名前がついているようです。じゃあ、いったい誰?
ヴィクトリアは、19 世紀イギリスが大英帝国と呼ばれた時代の女王様。そして、アルバートはその最愛の夫君です。
イギリスの王室にはめずらしく?とても仲のよいカップルでした。アルバート公は42才で亡くなってしまうのですが、女王はそれから40年喪服を着て過ごしたそうな。
V&Aという美術館の名前も二人の仲のよさを暗示してるようです。
水晶宮のあとで
だからといって、このミュージアムは、王室コレクションを基にしているわけではありません。万国博覧会の名残りなのです。1851年、ロンドンのハイド・パークで世界で初めての万国博覧会が行われ、前代未聞の大成功を収めました。
水晶宮と呼ばれる会場には、世界中から人が 集まったといいます。その様子は上の当時描かれたイラストからもうかがえますね。総合指揮をとったのはアルバート公でした。
この博覧会の収益でもって、産業の促進やデザイナーの育成を目的に創られたのがV&Aなのです。
そんなわけで、V&Aは、いまも教育活動がとても盛んです。家族向けのプログラムでも、ミュージアム界の最先端をいっています。ぜひ、子供向け貸し出しキッドなどを利用してみてください。
ウィリアム・モリスがデザインしたレストラン
いまやミュージアムにレストランがあるのは当たり前。でも、昔はミュージアムで食事なんてとんでもないことでした。
ところが、V&Aはすべての人が楽しんで1日を過ごせるようにいろいろ考えていたのですね。
そして、世界初のミュージアム・レストランがここに開かれたってわけです。
その装飾を手がけたのは、あのアーツ・アンド・クラフト運動のウィリアム・モリスたち。
今でも「グリーン・ダイニング」と呼ばれる豪奢な部屋が、気軽なカフェとして使われています。
エドワード・バーンズによるステンド・グラス、モリスの壁紙や天井の装飾、瀟洒な照明リーズナブルな食事やサンドイッチが実に贅沢な気分で味わえるのです。
カフェについてはこちらでも。
トラに襲われる・・・
インド・ギャラリーにあるTipuのタイガーという展示物をご紹介しましょう。
等身大の木彫で、鮮やかに色付けされています。
なんと、このトラ、人を押さえて食いかかっていますよ!
とても恐ろしいシーンですが、実はなかにパイプオルガンが組み込まれておりトラの唸り声や青年の悲鳴がでるようになっています。その技術に驚く反面、いやはやブラックですね。
このトラは18世紀末のインドで作られました。イギリスがインドを植民地にせんと勢力を伸ばしていた頃です。
Tipuはインド南部のサターン(王様)です。イギリスとは敵対関係にあり、外国人が大きらいでした。このサターンはトラを神と崇め、自分の象徴にしていました。
ある時、カルカッタで英国軍将校の息子がトラに食われるという事件がおきました。そのニュースを聞いたTipuは大喜び、その記念につくらせたのがこのトラなのです。
ところが、後にTipuはイギリス軍との戦いに破れ、亡くなってしまいます。王室の私有物は没収され、このトラもイギリスに連れてこられました。
回りまわって最終的にV&Aに落ち着いたのです。展示されて以来、たいへんな注目を浴びたそうです。
この一連の話、歴史の皮肉としかいいようがありませんね。
V&Aには、インドやイスラム、中国、日本など、地域のコーナーも充実しています。
基本情報
入場料:無料 (特別展示は有料)
休館日: 12月24-26日
開館時間:10~17:45、金曜は~22:00
写真撮影:可
アートローグでは、一館だけじっくりツアーする「ロンドン・ミュージアムツアー」でV&Aをご案内しています。専門家によるプライベートなギャラリーガイドをお楽しみ下さい。