同時多発テロその後のパリ、ストリートアート
今回のパリ旅行の目的は、ストリートアートをみることだった。
特に、2015年11月の同時多発テロ後に、どんな作品が生み出されたか
-社会とアートの関わりに関心を寄せる者として見逃すわけにはいかない。
このブログでは、現地で撮った写真を紹介しながら簡単にお伝えしたいと思う。
パリのストリートアートの特徴のひとつは、小粋でキュートなことだろうか?
そこに、ストリートアート特有のちょっとしたブラックユーモアがはいりこむ。
スタイリッシュなスタイルもある。
次の作品など、スプレー缶で、こんな繊細な表現ができるんだと感心した。
これは、LAのアーティスト、フェアリーの作品。
ポップなストリートアートと、シックな街並みのギャップが面白い。
しかも不思議にあっている。
2015年11月のテロの後も、ストリートアーティストたちは間髪いれずに動いた。
いつもは、ひとりひとりが独自制作するのが普通だけれど、
この時ばかりは、20-30人のアーティストたちが結託したという。
ストリートアートは街と生きるアートであり、ストリートアーティストはそれをうみだすことを使命にしている人たちなのだ。
大きく書かれたメッセージ「Fluctuat Nec Mergitur」は、パリ市のモットーで、「波に打たれても、沈まない」という意味。
右のマークもパリ市の紋章で、荒波を乗り越える船のイメージ。
黒いバックに、白の文字がとても力強い。
同じイメージをつかったセトの作品。 小さな男の子が描いているのは、パリという船。
三つの事件が起きたそばの広場、レビュブリック広場には、今も人々が花やキャンドルやメッセージを手向けに来る。
そこにも、ストリートアートが埋もれている。
例えば、記念碑の上部には、恋人たちのキスシーンを撮った有名な写真作品を使ったものがある。
事件後、フェイスブックやツィッターでは、そのイメージが溢れたという。
この写真は、トリコロールの国旗と同じく、パリのいわばアイコンなのだ。
事件のおきたレストランのそばでも同じポスターを目にした。
よく見ると、恋人たちの胸には赤いインクが血のように流れている。
同じく赤の文字で、「Meme Pas Mal 」=「傷つきもしない」
そんなことで愛は挫けない、そんなことでパリも傷つかない、というメッセージなのだろう。
そのレストランのそばには、バンクシーの有名な作品も-レストランに向かって、花を投げている。
彼自身が手がけたのか?
それともストリートアーティスト仲間でよくやるように、バンクシーの友人が彼に代わって、残したのかもしれない。
いずれにしても、この場にして、この絵である。
事件後1ヶ月、パリに足を運んで、
ここで生活する人々は、起こった出来事を鎮魂の思いをもって、真摯に受け止めながら、
今までと同じように、「Je sui en terrasse ( 今日もテラスにすわる)」 と、前を向いて生きているのを確かめることができた。
ストリートアートは、そんなひとびととともに生き、勇気づけ、批判精神とユーモアを培う、生き生きとした表現だと、つくづく思った。