陶器の町で買う:ストーク・オン・トレント・ガイド
陶器の町で買う:ストーク・オン・トレント・ガイド
ストーク・オン・トレントへは、お買い物目的でくる日本の方々がたくさんいる。
このブログでは、以前、町を巡る運河沿いの散歩道をおすすめしたんだけど。。
そこでは、肝心の陶磁器工場の事そしてそこでのお買い物の事については触れていなかったっけ。
ストーク・オン・トレントへは比較的簡単で、ロンドンのユーストン駅から、「バージン」列車に乗って、直行で約1時間半で到着する。
考慮すべきは、むしろ現地での足だ。
なにせ各工場が離れており、また交通機関も発達しておらず、1日で周ろうと思ったら、自家用車かタクシーを利用するのがベスト。
ローカルバスが走ってはいるが、本数が少なく、工場そばにバス停がない。
列車駅はひとつだが、ストーク・オン・トレントというひとつの町があるかというと、そうではなく、それぞれが離れた6つの町からなりたっている。工場もばらばらだ。
日本から訪問される場合は、まず、それらの事を心得て、計画するべき。
わたしが訪れたのは、次の5箇所。
Wedgewood&Royal Doulton アウトレット・ショップ(ウェッジウッド)、Burleigh Factory(バーレイ)、Emma Bridgewater Factory(エマ・ブリッジウォーター)、Portmerion そして近頃オープンしたばかりのWorld of Wedgewood (ウェッジウッド)である。
運河沿いを歩いたり、タクシーを使ったりしたが、目にする町並みがちょっと寂れていることに気がついた。
この町の黄金期はおそらく産業革命時代からビクトリア期であって、時をおうに従って斜陽したに違いない。
タクシーの運転手は、口をそろえてこういう。
「こんな風になったのは、20年ぐらい前からですね。
だって、安い労働力の中国にごっそりもっていかれたからね。」
そんななか、2015年の8月に、World of Wedgewoodがリニュアルオープンした。
工場の跡地にできた、新しい施設で、
ショールーム、小さなアウトレットショップ、博物館も工場見学も体験コーナーもあって、半日遊べる。
出会ったひとびとは、ほとんど海外からの観光客だった。
でも、あなたの目的が買い物ならば、
離れたところにある、Wedgewood&Royal Doulton アウトレット・ショップの方がだんぜんいい。
目のこえた人がいうには、日本にはないデザインがわんさかあるらしい。
値段も、円安(1ポンド=190円)でも日本の30-70%近く安いという。
日本では最高級の棚にあるものが、スーパーマーケットのように手ごろな値でゴロゴロうっている。
こちらが、その大きなアウトレットの方。
それにつけても、奇妙な現象は、海外からの買い物客が集まるファクトリーショップと、寂れた町並みのギャップだ。
そんな中で、一箇所だけ、活気溢れる工場があった。
集まる人々もイギリス人が多いようだ。
どこかというと、「エマ・ ブリッジウォーター」の工場である。
日本でも、水玉模様のおおぶりで日常的な陶磁器として、ご存知の方もあるだろう。
エマは、1980年代に、「お母さんへのプレゼントを探していたけれど、思うようなものがなくて、自分でつくった」のが、はじまりとされている。
グローバル化がすすみ、イギリスの陶磁器産業が構造的に傾いている中、
彼女のビジネスが伸びてきたのは、徹底したパーソナルなブランド化だと思う。
普段使いの、使いやすい、手作り感が溢れる、そんなパーソナルな器をつくり、
パーソナルなストーリーをつくって、パーソナルな環境のなかでアピールする。
その特徴は、工場やショップを歩くだけで、目にすることができた。
たとえば、ショップ裏の小さなガーデンでは鶏たちが放し飼いになっていた。
その鶏たちは、デザインのモデルになった。
庭の片隅には、従業員から「エマへ」という25周年記念のお祝いのプレートがさりげなく飾られていた。
体験コーナーでは、親子連れが、簡単にできる陶芸教室を楽しんでいた。
カフェでは、オーガニックで野菜たっぷりのメニューが、家庭的な雰囲気のなかで楽しむことができる。
そこでお客様とランチをとっていたら、シルバーヘアーの素敵な男性が近づいてきた。
「日本からいらしたんですか?」
「ようこそ!!で、日本のどちらですか?」
「大阪です」
「大阪にはいったことがありますよ。はんきゅうデパート。」
「お仕事で?」
「ええ、そうです。大阪はすてきな町だ。食べ物が美味しくて、人は親しみがあって。」
「わたしは、○○年前に、エマと結婚した者です」
「・・・え? エマのだんなさん?」
ニコニコ
とても気さくで幸せそうなご主人だった。エマのことが誇りなのがよく伝わった。
斜陽のストーク・オン・トレントから逃げず、むしろそれを支える、今まさにのびているブランドだ。
その成功は、日常に溶け込み愛される器にこだわる一貫した姿勢からきているのだろう。
なんだか、エマ・ブリッジウォーターのブランドの宣伝みたいに終わってしまったが、
それぞれの工場が持ち味を大事にしながら、なんとかがんばっているのは間違いない。
伝統や権威によりかかるだけではなく、
新しいコンセプトを探りながら、町としての活気をとりもどすことを願って止まない。
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<ファクトリーショップでのお買い物についてのメモ>
1. 30-70%引きで購入できる。
2. 日本への輸送料は、ダンボール一箱分で、35ポンドほど。
3. 輸送の場合、消費税が自動的にひかれるので、うまく利用すれば、輸送料は結果的に無視できるほどに。
4. あくまでもファクトリーショップなので、梱包はほんとうにおおざっぱであることを予めご承知のこと。
5.工場間のタクシーはすぐにきてくれるが、海外からの観光客にはふっかけてくることがあるので、要注意。
6. ロンドンからの日帰りの場合、動き方や1箇所での時間のかけ方によるが、1日で回れるのはせいぜい3箇所ぐらいが目安。
7.ロンドンからの列車チケットは事前に購入した方がかなり安い場合が多い。
このブログは、アートローグのディレクターによって書かれています。
アートローグは、ロンドン現地にて、ユニークな文化の旅の企画・ご案内や
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