世界に冠たるミュージアム
大英博物館ほど世界に名の知れたミュージアムはないでしょう。イギリス観光なら、まず頭に浮かぶ名所です。
ならば、「じゃあ、何をみたの?」と聞かれた時、生き生きと思い出が甦ってくるような見学を、ぜひともしていただきたい。
このページでは、「ロゼッタ・ストーン」や「パルテノン神殿」の大理石彫刻など
ガイドブックに載っているようなお宝について解説を繰り返すつもりはありません。
そんなことより、見学がもっと楽しくなる裏話をお伝えしましょう。
大英博物館に並んだひとつひとつの展示品については、アートローグのツアーでお待ちしております。
名前のヒミツ
「大英博物館」の名前って、まんまじゃない。ヒミツって何よって?
大英博物館、英語ではThe British Museum、
直訳すれば「英国博物館」です。
では、なぜ日本語では「大」がついているのでしょう?
明治初期、この博物館のことが日本に知れ渡った時、
イギリスは世界最強の「大帝国」でした。
後進国だった日本もこの国の産業や文化を吸収しようとやっきになりました。
だから単に英国博物館ではなくて、「大英博物館」と訳されたのですね。
ところでBritish Museumという英語名にも裏話があるのです。
BritishとはBritain Island(ブリテン島)から来ています。そう、あの三角形の島。
ところが、この島は昔からひとつの国だったわけではない。イングランドとスコットランドはくっついたり離れたりしました。
サッカーFIFAのチームだって、イングランドとスコットランドに分かれてますよね。
大英博物館がつくられたのは1759年ですが、その少し前までイングランドとスコットランドは別の議会をもっていました。
ところが、スコットランド政府が大きな負債を抱えてしまい、イングランドが借金を代わりに返す代わりとして、イングランドの傘下に入ることになったのです。
そのあとに建てられた国家的施設には、「British」がつけられるようになりました。
The British Museumは、その名前がついたはじめての施設だったのです。
ご存知のように、スコットランドでは独立する動きがでています。もしそれが実現したら、このミュージアムの名前はどうなるのでしょうね?
中庭にはもともと・・・
博物館の中央には、グレート・コートと呼ばれる光あふれる開放的な中庭があります。ここにはインフォメーションやカフェがあり博物館のセンター的役割を果たしています。
古代ギリシア風の荘厳な建物に、曲線を描く巨大なガラス天井の現代建築がマッチしてとても魅力的な空間です。
その中央には、円柱形の建物がそびえています。
そこには特別展示場やレストランが入っているのですが、実はここ、かつて大きな図書館だったんです。
蔵書の核になったのは、寄贈された王室の本。
設立当初の大英博物館は、展示物である「もの」と「本」がセットになっていて、
宝物を鑑賞し、ついでにそれらについて詳しく調べることができたのですね。
この施設を利用した人のリストには、
レーニン、ガンジー、夏目漱石など蒼々たる名前が並びます。
マルクスは毎日ここに通い、「資本論」を執筆しました。南方熊楠は他の利用者と大げんかをし、ブラックリストにのってしまいました。
やがてコレクションが膨れ上がり博物館が手狭になったため、1997年に図書館部門がキングス・クロス駅近くに移転し、
新たに大英博物館 Btitish Libraryができたのです。
異文化の「生と死」の意味
グレート・コートを抜けると「Living &Dying(生きることと死ぬこと)」という展示室があります。団体ツアーにはほとんど無視されてしまうのですが・・・このページをご覧になったあなたには、ぜひとも足をとめてもらいたい。
ここには地球上のさまざまな文化が「生と死」という深遠なテーマにどのように向きあっているかを語っています。
たとえば、イースター島のモアイ像があるかと思えば、メキシコの「死者の日」の大きなガイコツ、などもある・・・
展示室の中央の長いテーブルには、美しい布が飾られています。よくみると、おびただしい数の錠剤が織り込まれている。一列になんと14000個。ひとりのイギリス人が生涯を通して平均的に摂る薬の数です。
これは、「ゆりかごから墓場まで」というちょっと皮肉な題のイギリス人アーティストによるコンテンポラリー・アートなのです。
グローバル時代の多文化共生という大きなテーマ。21世紀の大英博物館の挑戦がうかがえます。
基本情報
入場料:無料 (特別展示は有料)
休館日: 12月24-26日、1月1日、
開館時間:10~17:30、金曜日は~20:20
写真撮影:可
地図
アートローグでは、一館だけじっくりツアーする「ロンドン・ミュージアム・ツアー」や「大英博物館とナショナルギャラリー堪能ツアー」を実施しています。どちらも、専門家によるプライベートなギャラリーガイドです。