森万里子のバブリーな世界

ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで森万里子展をやっている。
彼女の初期の、アニメのキャラクターに扮装して電気街などで撮影した写真作品とか、
ハイテクと神話の世界が融合したような作品は間接的には知ってはいたが、
最新の作品をまとめてみるのは初めて。
はっきりいって、かなり落胆。
はじめからそれほど期待していたわけではない。
でも、昨年の草間弥生、オノ・ヨーコと続き、ロンドンの展覧会で紹介された日本人女性作家の展覧会だから、それなりの関心を寄せてはいた。
で、ぜんぜんおもろない。

作品はどれもこれも虚構の世界、瞑想の世界を映し出していて、
彼女が実際の沖縄の海を見ながら瞑想中に生まれた世界観だといわれようと、
あ、そう、きれいねとか、居心地いいねとか、不思議な感じね、で終わってしまう。
それが彼女の作品の特徴でしょ、っていわれればそのとおりだが、
表面的でつるんとスルーしてしまい、中にはいっていけないのだ。
たとえ、共感できるリアリティーがなくったって、
そこに、彼女独自のオリジナリティーがあれば、それはそれでうんと面白くなるのに、
どこかですでに観たイメージの二番煎じなのだ。
アニメとか、縄文とか、神殿とか、巨石遺跡とか、日本的なものを
テクノロジーを使いながら見せられても
ふーん、言いたい事はわかるけど、ちっとも心に響かないのです。
ぷちんとすぐに消えちゃう。

ググってはじめてしったのだが、
森万里子は、あの森ビルの創始者の孫なのだそうだ。
ご存知のように六本木の森アーツセンターのオーナーで、
この数十年、不動産業で得た財力で日本の美術界におおいに幅を利かせている。
なんだかそのバブリーな感じが、森万里子というアーティストの表現にも流れているのかもしれないと疑ってみる。
森万里子ワールドは、なにせオパールなバブルに満ちテルからね。

こんな作品がロンドンの大きな美術館で展示されているなんて、
いったい何がおこったのだ。なんか裏でお金が動いているのかー?
グローバルな美術マーケットではバブリーなお金が動いて当然といえば当然だけど・・・
それならそれで、入場料(10ポンドもする!)払ったことがとっても悔やまれるわけ。

今回のブログは、はじめから悪態ばかりついているけど、
でも、美術を見に来て落胆した人は、たぶんわたしだけではないと思う。
会場は日曜なのに閑散としていて、そこにいる人々だって、とりたてて引き込まれている様子に見えなかった。ねそべってる人はいたけど、床つめたそー。
癒しを求めにいらっしゃる人はぜひどうぞ。ただし、おざぶを忘れないで。

ひとつだけ発見。
それは、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの新しい展示空間(従来の美術館の裏手)
のなかに素敵なカフェをみつけたこと。
ここには展覧会のチケットを買わなくても入れます。


 

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