イギリスのミュージアムにある日本のモノ
イギリスには、日本のモノ(美術・工芸・その他)をもっているミュージアムが何館ぐらいあると思われるでしょうか?
実に150を超えるといいます。
その数をはじめ聞いた時、少なからず驚きました。
さすがミュージアム大国、いや大帝国だった名残と言ったほうがよいのかも。
だけれど、日本を専門とする学芸員がいるのは、
大英博物館やヴィクトリア&アルバートミュージアム、スコットランド国立博物館など、両手でおさまるくらいだといいます。
つまり、ほとんどのミュージアムは、ほかの地域や分野を専門とする学芸員が面倒をみているってわけ。
いったい、イギリスにおける日本コレクションの実態はどうなっているのでしょう?
少し前ですが、大学共同利用機関法人・人間文化研究機構 (本拠:国立歴史民俗博物館)から、
その実態調査のお手伝いをする依頼をうけました。
具体的にした仕事内容(ディレクターの個人の仕事として)は、
日本コレクションをもつミュージアムのウェブサイトを調べ、
どのくらい日本コレクションが紹介されているか、どのような紹介のされ方をしているのか等の調査と、
担当学芸員に直接アンケートを依頼し、
オンライン構築上に直面している問題点とか、日本からどのような支援を得られれば有効かなどを聞きとり、
それを分析する事でした。
その結果をここでお話するつもりはないけれど、
(ご興味がある方は、ページ下にある報告書を参考にしてください。)
その調査の一貫で出会ったある日本展示室の様子や、考えたことを記しておきたいと思います。
イギリスという国が日本をどうみているのかー
その一辺がわかって、後からでも興味をもって読んでいただけるのでは?と思うからです。
ダラムは、イングランドの北部にある、ユネスコ世界遺産にも指定された歴史ある美しい町です。
ダラムには、オックスフォード、ケンブリッジに続く歴史ある大学があります。
ハリーポッターで一躍有名になったダラム大聖堂もあります。
訪れたダラム大学のミュージアムは、町の外れにありました。
大学のミュージアムっていうと、日本の大学ミュージアムのような、堅苦しいイメージがありますが、
このミュージアムは、家族向けをメインとした、とても親しみやすいものでした。
展示室の全体はこんな感じ。韓国と隣り合わせにあります。
右手に仏像とか甲冑とかがみえますね。
もう、「日本といえば○○○」、という代表格です。
手前は、子供たち用の小さな机と椅子。
こんな日本風のリラックスするワークショップスペースもあります。
襖絵をみながら、サムライたちの物語を読み解くのでしょーか。
このへんも、典型的な日本を代表するモノたちです。
でも、日本で使われたモノではなくて、ヨーロッパへの輸出用の磁器です。
鎖国されていても、日本とヨーロッパのあいだに交流があったことを伝えているのですね。
古いものばかりではなくて、現代の工芸家の作品も隣に並んでいます。
そうかと思えば、着物のとなりにあるのは、かわいいファッション。
かわいいファッションの下には、セーラームーン。
そいでもって、リラっクマ温泉グッズまで!
日本って、面白い国ですね~。
富士芸者のステレオタイプではなくて、こういう新しい面を紹介してくれているのは、なんだか嬉しい。
まさに今の日本の一面なんだし。
イギリスの若者も漫画やサブカルチャーから日本に親しんでいるのなら、
それをとっかかりにして、日本にますます興味をもってくれるし。
そのことをミュージアムはわかっているのですね。
でも、このミュージアムの学芸員も日本の専門ではありません。
特別展示では、50年代から70年代の日本の映画ポスターの展覧会とかをしていました。
彼女は、なにもないところから、苦労して調査したんだと話してくれました。
こういうがんばってくれている学芸員がいる一方で、
残念ながら、もっているコレクションの価値が充分わからず、
昨今のキューキューの経済事情で、コレクションを売り飛ばさざるを得ない館も、実際でてきているようです。
日本側がなんとか手をかしてあげて、
イギリスのミュージアムで日本の文化をもっと活き活きと紹介してくれて、
世界のひとびとが日本のことをもっとわかってくれたら、と素直に思います。
アートローグは、
日本とイギリス(ヨーロッパ)の文化コーディネートのお手伝いもしていますので、
何かお役に立てそうなことがあれば、是非ご連絡下さい。
・・・と、今回は、宣伝で締めくくってしまいました。
ちなみに、冒頭に書いた報告書は以下になります。
『英国とアイルランドの日本関連コレクションの現状とデータベース化に係る調査報告書』
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 編
執筆者 三木美裕
データ集積/分析 吉荒夕記
監修 国立歴史民俗博物館 館長 久留島 浩
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