超ポストモダン建築と325年の歴史:ロイズ保険会社

2014-03-28 21.21.01-96

ロイズ保険会社

ロンドン・シティの真ん中にど肝を抜くような建物が聳え立っている。パイプやエレベーターがむき出しで、屋上にはクレーン車までおかれたまま。

化学工場をアートにしたような感じといったらよいだろうか。

まさにSF映画のにでてきそうな超ポストモダンな建築物-ロイズ保険会社だ。

先日、運よく建物内に入る機会を得た。
建物内もわくわくする空間だった。
近未来と歴史が混在していた。

中にはいるとすぐに広々とした印象を受ける。
トイレや空調施設や建物としての付随機能が外にでているためだろう。
というか、それこそがこの建築家リチャード=ロジャーズのコンセプトなのだ。
天井も壁も床も、グレイで無機質的な素材が使われ、中央部にあるエレベーターだけが黄色く色彩を添えている。
いつもはここで、最先端のグローバルな金融活動が行われているわけだから、建物の無機質さと働く人々の活気のコントラストが浮き彫りになるにちがいない。

 

建物の真ん中まで来て再びびっくりした。
時代錯誤的なものがでーんと設置されている。

美しく輝く金の鐘だ。
このグレーな世界にヒトキワ映えること!2014-09-20 11.20.18

なんと18世紀からこの保険会社で使われているという。
悪い知らせがあった時は鐘が一回、よい知らせがあった時は二回打たれるのだそうだ。
タイタニック号の事件の時も、こないだはウイリアム王子とケイトさんに息子が生まれた時も、この鐘が鳴らされた。

この保険会社の誕生は325年前。
大航海時代、ヨーロッパの国々は競って外国と取引をした。

貿易船が沈んでしまった時、投資のリスクを軽減するために、船会社や貿易商の人たちが知恵を絞って考えたシステムが、その起源だ。
話合いがなされた場所はロイズ・コーヒーハウスであった。
そこでは最新の海外事情をいち早くつかむこともできた。
鐘はそのなごりなのである。

そういう昔の伝統を、こんな建築物のなかにもきちんと残すあたり、「いや~イギリスだ」と、うならせてしまう。

2014-09-20 11.25.23もうひとつびっくりしたことがある。
11階まで行くと、重要な会議室や応接間が並ぶフロアーになる。
そこからの眺めはまた格別だった。
しかし、そのフロアーにあるドアを抜けると、別世界が待っていた。
このコンクリートの化け物のような建築物の中に、18世紀の優雅なダイニングルームがすっぽりと収まっているのである。
水色で統一された明るい内装に、シャンデリア、その豪奢な事。
でも、けしてケバケバしくはなく、調和がとれている。

古典主義建築を風靡したロバート・アダムスの手によるものだ。
昔、使われた部屋が、1986年にこの建物が出来たときに、そのまま移築されたのだ。
ギャップがここまでくると、「違和感あり」とか「意表つくわ」とか、なんとかかんとかコメントを出すような余裕さえない。
いや、おもろい!の一言だ。

ロンドンの街は、歴史と斬新なものが並列されているのが大きな特徴だが、ロイズ本店のように中にもそのコントラストにでくわすとは思いもよらなかった。

これだから、ロンドン探検はやめられない。

 

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