ホームレスを展示する:ジェフリー博物館
ジェフリー博物館は、イギリスのミドルクラスの家の歴史的変化を辿るミュージアムです。
ここで、なんと「ホームレス」をテーマとする特別展示をするというニュースをききつけ、とても楽しみにでかけました。
でも結果からいうと、ちょっとがっくり。
ジェフリー博物館の建物は、ヴィクトリア時代の救貧院です。
その立地である東ロンドンは、今でも貧困層が多い地区。
この博物館でこのテーマの展示をする意義はとても大きいと思いました。
だから、きっとこの特別展示は、現在の問題とも絡めているに相違ないと思ったのですが、それがうまく繋がっていなかったのです。
特別展示室内で展示されているのは、ヴィクトリア時代のホームレスの人々の事。
この時期は、ロンドンの人口が膨れ上がり、貧富の差がとても大きい時代でした。
展示は、ストリート、ワークハウス、シェルターなど、彼らが「住んだ」場所を、構成のカテゴリーとしています。
こういう展示って、やはり、来館者がシンパサイズするような内容でないと、入っていけないと思うのですが、
わたしと展示の対象になった人々の距離はちぢまりません。
時には、オーラルヒストリーもいれていたのだけれど、いかんせん生の声はない。
少なくとも、キャラクターによって声優をかえるべきだとおもうのだけど、ほとんど同じ声優の声でした。
がっかりして展示室を後にすると、なんとそこに、現代のホームレスの人々の展示がありました。
しかも、壁に設置されたウィンドーケースの中なので、インパクトがなくて、まさに展示の付け足しというかんじ。
だけど、内容的にはこちらの方がうんと面白かったし、彼らの声が届いたのです。
若いホームレスの人々は、自尊心を高めるための支援ワークショップに参加し、
そこで、このヴィクトリア期のホームレスの展示もみていて、それに触発されてアニメーションをつくったり、詩をかいたりしていました。 とても美しい詩もあって、心を寄せることができたのです。
それゆえ、さらに疑問。
なぜ、すぐ隣の特別展示室のなかに、ここの展示をいれなかったのだろう?
スペースの問題? 時代を明確にしたかったから?
「ホームレス」をテーマにすることの様々な社会的軋轢?
このミュージアムが、「ホームレス」をテーマにしたことの挑戦には、声援を送りたい。
でもさ、「ホームレス」って、昔だけにおこった事でおしまいにするのではなくて、
現在も続いているわたしたちの身近な問題であることを、もっとうまく伝えてほしかったなあ。