ピラミッドの中へ:ギザ

カイロから地下鉄とタクシーを乗り継いで小一時間、
四角い近代的ビルが林立する町の向こうに、
巨大な三角形の頭が目にはいった。
子供の頃から何度もそのイメージをみてきたギザのピラミッド 群だ。
さらに近づくと、あのスフィンクスも見えてきた。
その圧倒的な存在を今自分の目でみているのだと思うと実に感慨深い。
紺碧の空を背景にして、赤茶色の建造物が美しい。
後ろにひろがるのは砂漠だから、古代大建造物を邪魔するものがない。
あるとしたら、せいぜいらくだ乗りやお土産をおしつけてくるエジプト人ぐらいだろう。
色鮮やかな民族的カーペットを載せたラクダは、むしろ彩りを添え、どのアングルできりとっても絵になる。
土産売りやラクダ乗りの商売人たちを適当にかわしながら、ピラミッドやスフィンクスの周りをしばらく歩き回った。
1月、カイロの冬は、19度~23度ぐらいで、風も心地よい。dsc_0094-copy

エジプトには90ほどのピラミッドがあるといわれる。
中でも最大のクフ王のピラミッドは、なんと紀元前2500年ぐらいにできたものだ。
今から4000年以上昔の人々がどうやってこんな巨大な建築を成し遂げたのか・・・、
宇宙人がつくったんじゃないかとかさまざまな風説があるけれど、
実際に自分の目で眺めれば、それがまことしやかに思えてくる。
石組みは見事に磨かれて、滑らかに統一された表面をつくりつつ、一寸の隙間なく組まれている。
四辺の底辺のを作るのは比較的シンプルなエンジニアリングかもしれないけれど、
頂点を底面中心の真上にもってくるように、徐々に組み立てていくのは、
数学的・幾何学的・天文学的知恵がなくては、不可能なことだろう。

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実はこのピラミッドには中に入ることができる。
特別なチケットを買って、小さな冒険をすることにした。
入り口でおじさんに、「また明日あいましょう!」と声をかけられた。
「あの世であいましょう」と答えた。

暗闇の中、細い道が奥までずっと続いている。
その道は、石の壁と天井で囲まれている。
最初は低天井で、頭を石にぶつけないよう60度かがみながら、上っていく。
向こうからおりてくる人とギリギリですれ違いながら、だんだん空気が薄くなるのを感じながら、
小さな空間を経ると、こんどは、うんんと高い天井のところにでた。
のぼっていくのに必死で、ゆとりなんかなかったけど、ふと、壁や天井をみあげたら、そのひとつひとつの石工が実にすばらしい!
板状に削られた薄い巨大な石板が見事に組み合わされている。
膝をガクガクいわせながら、一息ついて、古代の人の知恵と技術に見入った。

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一番おくまでいくと、待っていたガードのおじさんが最後の部屋に招きいれ、トーチを照らして、部屋の隅々をみせてくれた。
6畳ぐらいの石で覆われた部屋は、石棺がおかれているだけ
真ん中にたつと声が部屋中にこだまする。なぜか空気が暖かい。
ここがクフ王の黄泉の国に続く家なのだ。

帰りは、同じ細道を下っていく。
ピラミッドの外に出ると、急に明るい太陽の下、広がる青空とその下のギザの町がみえた。
地元エジプトの観光客や海外旅行者や、彼らを相手に商売をする人々の生き生きとした様子が目にとびこんできた。
うちへうちへと入っていく暗闇の世界と音と色の鮮やかな現世とのコントラスト!
ピラミッドの内部は、みごとな石工以外、みるべき宝はないに等しい。
だが、ガイドブックが唱うように、「ピラミッド内部の経験をしよう!」というよりも、
ピラミッドからでてきた時のこのコントラストを感じたことの方が、わたしにとっては代え難い経験だった。

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