女王との距離
初春のある日、ロンドンの公園をブラブラしていたら、エリザベス女王のパレードに出くわした。
メキシコ大統領を出迎えるための式典だという。
バッキンガム宮殿前のモールには、両国の国旗がズラーと掲げられ、
その道を、騎馬兵や音楽隊が隊をなして、颯爽と進んでいった。
やがてすぐに、王室メンバーがのった輝くばかりの馬車の列が通って行った。
女王の乗る馬車が先頭だ。メキシコ大統領と一緒なのだろう。
在英12年にして、生の女王をみるのはこれで3回目だ。
別に女王の追っかけではない。いつも偶然。
それは、たまたまラッキーなだけではないと思う。
日本と比べて、生身の君主が公の前にでるのは圧倒的に多いからだ。
言い換えれば、クィーンは社会ともっともっと近しい関係にある。
王の権威の象徴である持ち物だってそうだ。
王冠・王杓・宝玉の三種の神器は、彼女が実際に使っていない時には、
ロンドン塔のジュエリータワーの中にあって、長蛇の列の人々の前にさらされている。
かたや日本の三種の神器は、ご存知のように、恐れ多く隠蔽されている。
女王のイメージは、ジョークの対象にもなって、町に並ぶ。
時には、ここまでしていいのかと、思うくらいだ。
こういうのは、日本では到底ありえないと思う。
イギリス、日本、どちらも象徴君主だが、決して未来永劫続く絶対的制度でもない。
それにしても、この社会との距離の違いはどこから来るのだろう?
その違いは社会にどういう影響を与えるのだろう?
ヨーロッパの君主のあり方や、それに照らするなかで日本の社会が浮き彫りになって、
なかなか面白い。
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