『種の起源』が書かれた部屋:チャールズ・ダーウィンの家
イギリスには、政治家とか、貴族とかが住んでいた家が、そのまま残っていてミュージアムになっているところがたくさんあります。
荘厳な建物、豪華な家具調度、素晴らしい庭・・・ため息がでるばかり。
昨秋、そんなひとつにはじめて訪れたのですが、ここには、他にない感動がありました。
どこかといえば、あの『種の起源』を書いた生物学者チャールズ・ダーウィンの家です。
ダーウィンは、いつも体の不調に悩まされていたので、
父の財産をうけて、ロンドンから家族ともどもケントにある田舎家にお引越ししたのでした。
ここは、有名人の家によくあるような「家族」とか「生活」だけの家ではない。
ダーウィンが亡くなるまで、家族と生活をしながら、「仕事」をした家でした。
しかも、大仕事が成し遂げられた部屋のある家です。
彼の書斎には、
大きくて使い込んだアームチェアーがあり、テーブルの上にはペン立てや試験管や手紙の束がおかれています。
暖炉の上には、ダーウィンの先祖の肖像画が飾られていて、部屋の隅には飼い犬が寝る網籠がある。
イギリスの片田舎のこんな家庭的な環境で、こんな小さな部屋で、アームチェアーに腰掛けたダーウィンの膝の上で、
それまでの世界観を根底から変えた、あの『種の起源』が書かれたのだと思うと、
生物学なんかほとんど無知のわたしですら、なんだか鳥肌がたってしまいました。
でも、この辺鄙な家だったからこそ、そんな大きな偉業が成し遂げられたのかもしれないとも思いました。
家族や使用人以外の誰にも邪魔されず、アカデミズム世界のマイナスの影響にもされされず、
ただ自分の信念だけを貫くことができたのだから。
裏手には素晴らしい庭が広がり、果樹園やサンルームがある。
ダーウィンは、ビクトリア期としては、珍しいほどの子煩悩の父だったそうで、
思想の手がかりとなった植物を庭で育てる研究者としてのダーウィン、
子供たちとかけまわる父としてのダーウィンが
今もそのへんで顔をだしそうで・・・。
邸宅や庭を歩きながら、往時をしのびつつ、大いなる学者としてのダーウィンをなんだかとても身近に感じました。
邸宅内は写真撮影禁止ですが、お庭で何枚か写真をとってきました。
みなさんも、写真でお散歩して下さいね。
ダーウィンの家には、ロンドンから電車で30分。駅からバスにのってさらに30分ほど。
最寄のバス停は小さな村のなかにあり、その田舎を散策したり、古いパブにはいったりするのも素敵です。
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