ロンドン,シティーの建築タイムトリップ
金融街として有名なロンドンのシティー。実は、ここにはもうひとつの顔がある。「重層的時間」だ。
現在の最先端と古い歴史が、いたるところで隣あわせになっている。
今日は、「建築」に目を向けて、その新旧が融合する様をお伝えしたい。
上を向けば、ポストモダン
この街を歩くときは、ぜひ視点をいろいろな高さにずらしてほしい。
まず、目の高さには、石や煉瓦のずっしりとした建物が並んでいる。 17から19世紀にできた荘厳でエレガントな建物だ。
しかし、視線を上にあげれば、突然、異質なものがニョキッとでていることに気がつく。
例えば、左は、アルゼンチン生まれのラファエル・ヴィニオリの建築。
東京国際フォーラムをつくった建築家である。
ずんぐりした形が昔の携帯無線機に似ているから、「ウオーキー・トーキー」とあだ名がついている。
まだ建築中だが、最上階には世界最大の空中庭園ができるという。
まるで世界七不思議のひとつが実現するかのようだ。
この建物だけではない。どの方角をみても、シティーの空に、ユニークな現代建築が顔をだしている。
下の方に連なっている装飾的で重厚なビクトリア時代の建物との、そのギャップたるや!
おそらく、このギャップに不快を感じる人もいるだろう。
あまりに異質なものの組み合わせが、街の雰囲気を壊しているのではないかと考える人もいるだろう。
しかし、それこそが、街という大きなスケールを舞台に、「近代」に対して異を唱えた「ポストモダン」の堂々たる挑戦とはいえないか。
そして興味深いことに、このシティーはその挑戦をうけいれ、さらに吸収しようとしているかのようだ。
古代ローマ・バジリカとハイテク建築
シティーの東側に足を伸ばせば、「レデンホールマーケット」という古い市場にたどり着く。
赤とクリームを基調としたヴィクトリア時代の美しいアーケード・マーケットである。
この独特の雰囲気を活かして、たくさんの映画が撮影された。
2012年のロンドン・オリンピックのマラソンのコースにもなった。
市場として現役でもある。
昼時になれば、スーツ姿のバンカーたちがランチをとったり、ビールを飲んだりして、活気に溢れている。
先日、その通路を抜けて、アーケードの外にでてみたら、びっくり仰天した。
いきなりタイムトンネルを通ったのではないかと、目を疑うほどだった。
目の前に突如現れたのは、未来都市のような建築物だったからだ。
配水管やエレベーターや、電気配線のパイプなどがむき出しになった「ハイテク」な巨大なビル。
これは、イギリスの建築家リチャード・ロジャーズが手がけた「ロイズ銀行」である。
その向かいのビルのガラス張りの凹版に、そのまがまがしい姿が映りこんでいる。
そちらの方は、フォスター+パートナーズのWills Bilding。
そして、その奥に、たけのこのように顔をのぞかせているのが、「ガーキン」(きゅうりの漬物)と呼び習わされているビル。
同じく、フォスター+パートナーズの建築だ。
タイムトンネルは、さらに続く。未来にも、過去にも縦横無尽に。
というのも、すぐ隣には、考古学の発掘現場があるからだ。
なんと、ここには、ロンドンが古代ローマの植民地だった頃(紀元1-4世紀頃)の、巨大なバジリカやフォーラムがあるという。
AD1世紀から、14世紀へ。 ビクトリア時代から21世紀へ、時空が抜ける。
そんなシティーを歩くのはほんとうにスリリングで、
まさに、タイムトリップを地でいく世界だと思うのだけど、どうだろう。
このブログは、アートローグのディレクターによって書かれています。
ロンドン現地にて、ユニークな文化の旅の企画・ご案内や
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