マンデラの生を祝う
ネルソン・マンデラが逝った。英国のプライムタイムのニュース番組では、60分の大半をそのニュースに充てていた。南アフリカの人々の様子をみていると、喪に服するという感じには見えない、むしろお祝いをしている。彼の死をではない。ネルソン・マンデラという人がこの地に生まれたこと、彼の時代に自分も生きたことに感謝し、アフリカが生んだヒーローを讃えているのだ。
そのようなひとびとの対応のしかたに、アフリカの大きさとパワーを感じる。その一方で、このイベントの裏にANC(マンデラが率いた党)の操作がひょっとしたらあるのかもしれないなと、うっすら勘ぐってしまうのだが・・・(昨今のANCは、マンデラが党首だった時代よりかなり腐敗がすすんでいるらしい)
そんな推測はさておき、とにかく今日はネルソン=マンデラ、人々にマティバと慕われた人のことに思いを馳せ、彼を聖人化するのではなく、その精神を大事に引き継いでいこうと気を引き締めなおすべきだろう。平等と人権を求めて闘った不屈のリーダーであり、自分を圧迫するひとりの白人監視人にさえ、尊厳を見出そうとした人だった。
ニュース番組で興味深かったのは、イギリスとアパルトヘイト時代の南アフリカの関係を問い直していることだ。当時の英首相マーガレット・サッチャーが、国際連合の意向に反してアパルトヘイト政府に対する経済制裁に長らく二の足を踏んでいたこと、その間、イギリス国内で人種の差を越えて反アパルトヘイトの運動がたいへん盛り上がったこと、マンデラが釈放後、大統領になってロンドンに公式訪問したときのスピーチや人々の希望。二十年前。けっして遠い昔ではない。
南アフリカは日本にとって遠い国でもない。南アフリカにはトヨタをはじめ大企業の工場があり、昔から重要な貿易相手国だ。特に昨今は、グローバル化の流れで、アフリカ大陸に進出しようとしている企業はたくさんある。 実は、70-80年代当時の自民党政府も、南ア政府に経済制裁をくわえず、結果的にアパルトヘイトを容認した。南アからは、日本人に「名誉白人」という、不名誉な名が与えられた。そういう過去を、マンデラの死を扱う日本のメディアはどれくらい語っているのだろうか。
ロンドンの国会議事堂の前の公園には、偉大な政治家たちの像が立っている。その多くはもちろん英国人だが、ふたりだけ外国の政治家が含まれている。
ひとりはリンカーンであり、もうひとりはネルソン・マンデラだ。 今日はこれからろうけつ染めのシャツを着た、地面にすくっと立って笑っているマンデラに会いに行こうと思う。
南アフリカ大使館前で撮影した動画。マンデラはこの建物のバルコニーからトラファルガー広場に向かってスピーチをした。
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