アフガニスタンの修理屋さん
昔、家の近くの駅裏(名古屋駅)に、腕のいい靴修理職人がいた。
どんな難しい修理もこなし、靴は甦って、何年も寿命を延ばした。
口コミでひろがったのか、遠くからの出張ついでに、わざわざその駅で降りる人もたくさんいた。
でも、それは所詮、二十年以上も前の話。
今は捨てる時代だから、修理屋というものは絶滅の危機にある。
ところが、この大都会ロンドンで、そんな修理屋さんがまだまだ生きている。
というのは、発展途上国からの移民がたくさん住んでいて、彼らがその技術をもってやってくるからだ。
現在住まいしている北ロンドンの家のそばには、すご腕の時計修理屋がいる。
そこをみつけるまで、いくつかの時計屋にもちこみ、
うちではやってないとか、たらいまわしにされたりとか、なんとか行き着いても2週間かかりますとか、いわれてきてホトホト困っていた。
近所の駅そばの、間口の狭い店の前を通りかかった時、
白いひげのおじいさんが修理をしているのが目にはいって、
あ、ここなら、とピンときた。
大当たりである。
おじいさんが目の前でわずか数分で修理してくれる。
時計だけではない、ネックレスやペンダントもみごとな手さばきで直してくれる。
ほれぼれするような仕事ぶりだ。
その場でできなかったら、何が原因か、どうしないといけないか、きちんと理由をいってくれて、
1週間後にくるように番号札をくれる。
ここを見つけて以来、何度もお世話になった。
りっぱなひげを蓄え、民族帽子をかぶったおやじさんは、アフガニスタンの出身である。
「わしなんか、もうすぐ、お払い箱だよ」
「修理するより、新しいモノかった方が安くつくような世の中だしね」
「でもね。思いいれのあるものは、ずーっともっていたいって思うから、おじいさんみたいな人を必要としている人、たくさんいると思うよ」
「わたしがブログで紹介するからさ。 きっと日本からお客さんがくるよ」
と、ちょっとだまくらかして、照れるおじいさんをカメラに収めた。
そんなやりとりをしてたら、
お客さんがはいってきた。そばで働く駅員さんだ。
「おやっさん、これ直るかな?」
ポケットから出されたものは、キリストの磔の十字架がついたペンダントだ。
あ、っと思った。
イスラム教では、偶像崇拝をしない。
でも、アフガニスタンの修理屋さんは、
それをじーっと眺めて、どこに問題があるか説明して、修理に特別な道具がいるからと、
駅員さんに、番号札を渡した。
さすが、職人である。
そういうわけで、
皆様も、ヨーロッパ方面にお越しの節は、
壊れてしまったけど手放せない腕時計やジュエリーをポケットにいれて、ぜひ、ロンドンで途中下車して下さい。
冗談でなくて、仲介します。^^
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