ブリティッシュ・デザインのいくえ?

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V&Aで「ブリティッシュ・デザイン 1948-2012」展が開催されています。
その主眼は、先回のロンドン大会があった1948年から現代までのイギリスのデザインを
歴史的に検証することです。

V&Aにすれば、オリンピック開催を祝福する力のはいった展覧会だろうと思うのですが、
残念ながらわたしには、最初の展示室以外は、散漫な印象しか残りませんでした。
特に最後の部屋つまり現代のデザインについての展示室は・・・情けない気分にさえなってしまった。

いくつか原因があげられます。
まずは、テーマが大きすぎること。
限られたスペースで、半世紀の英国のデザイン全体を検証するのは、どうしても無理がある。
だから、展示の焦点があっちやこっちに浮遊してしまう。
これが、例えば、建築だけとか、ファッションだけなら、もう少し腰の据わった内容になっていたのではないか。

海外からはいつにも増して人がくるだろうし、装飾美術の世界的ミュージアムのV&Aとしては、
網羅的な展覧会をしたかったんだろうな、とは思うのですが・・・

もうひとつは、後半、特に80年代以降のイギリスに、世界をリードするような優れたデザインがない。
展示物の選択が悪いのではない、おそらく。
実際に、そのようなデザインが生まれなったのだと思います。

そこには、国家の方針がみごとなまでに反映されています。
展示の解説にもあるのですが、サッチャー政権はものづくり産業をつぶし、
その代わりにサービス産業、すなわち、銀行や不動産、教育、情報産業を支援してきました。

それは、先回のオリンピックの時期とは全く違う社会的状況でした。
当時は、戦後すぐの廃墟から英国社会を再生させようと、さまざまなレベルでのコンストラクションがなされる。
そこには、かならずデザインが介在します。当然ながら国家の大々的な支援がある。
片や、80年代以降は、国家的なエネルギーがものの方には行かなかった。
せいぜい、大規模建築に目覚しい動きが見られるだけです。

思えばV&Aは、英国のものづくりが最も盛んだった時期に、デザインを促進するために作られたミュージアム。
そこで、こうしたデザインの元気のなさを見るのはなんだか、皮肉なことです。
もちろん、国家のミュージアムがネガティブなことなど口が裂けても言えないでしょうが、
実体そのものが事実を語っているのではないでしょうか。

V&A British Design 1948-2012


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