トラファルガー広場の第四の像
ロンドンの観光名所、トラファルガー広場。
その中心に聳えているのは英国のヒーロー、ネルソン総督、
それよりうんと低いけれど、広場の4隅にも像がたっている。
国王とか、軍人とか、政治家とか、それぞれに
しかし、北西角にある第4の柱台は、他の3つとは全く様相を異にする。
実は、ここに載っているのはアート作品で、
コミッションを受けた現役アーティストが新作を創り、期間限定でここに設営するのである。
それら作品は、いつもイギリス社会の物議を醸しだした。
前の作品が撤去されると、今度は何が来るのかロンドンっ子の話題になる。
実は、ちょうど1週間ぐらい前、新しい作品の除幕式があった。
お目見えしたのは、ドイツ人アーティストのHans Hakkeの
巨大な馬のスケルトン、題して 「Gift Horse」である。
なんだか、標本資料みたいで、戸外でみるとショッキングだが、
よく見ると、首にリボンをつけていて、なかなかお茶目だ。
そのリボンは電光掲示板にもなっていて、
もっとよくみると、なんとそこには、
どうやら、いろいろなメッセージがありそうだ。
金融都市ロンドンの金とパワーか?
資本主義に対する皮肉か?
それが馬であることも意味がある。
隣の北東角にいるのは、馬に乗った英国王ジョージ4世。
騎馬像は、伝統的なパワーの象徴である。
誰だって、その騎馬像とのつながりをつくるに違いない。
でも、なぜスケルトンなのだろう。
それも何かしら皮肉なのだろうか。
実は、この立地にもうひとつのからくりがある。
この像の背後にある立派な建物はナショナルギャラリーだ。
館内のイギリス美術の展示室には、
馬を描かせたら右に出る者がいない画家、ジョージ・スタッブの作品がある。
素晴らしい毛並みの感触が感じられるような、
飛び上がった鼻息が聞えそうな、活き活きとした馬だ。
スタッブは、写実性を追求して
実は、Hakkeのスケルトンの馬は、
こうやって、いろんなことが結びついてくると、ますます面白い。
骨格だけの、ちょっと冷たいイメージも、
青い空に映えて美しいし、リボンをつけて愛らしい。
そんなわけで、2015年、あなたがロンドンのトラファルガー広場にいらしたら、このユーモラスな馬が出迎えてくれるだろう。
これをどう解釈するかは、もちろんあなた次第である。
ところで、過去、この第4の柱台にどんな作品が設置されたのか、アルバムから探して、ここに並べてみよう。
どれもこれも、それぞれにロケーションをうまく利用したユーモアたっぷりの作品ばかりである。
どの像が、あなたを迎えてくれましたか?
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