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高貴な人々の谷・職人たちの谷ールクソール

ルクソールのナイル川西岸、太陽が沈む側の赤い扇状の山々の谷は多数の王の墳墓が連なっている。
有名な「王家の谷」である。

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新王国の時代(紀元前16−11世紀 )、ルクソールはかつてテーベと呼ばれた都だった。エジプト王国が繁栄した時代の都、古代の世界の都だ。
古王国時代の王墓であるピラミッドからすれば、一見、山肌の横穴でしかないのだが、
ひとたび、その穴に入れば、色の世界が待っている。
王の墓室に描かれた壁画は王のパワー、神々とのつながりを幾何学的構成にのっとって、細部に至るまで丹念に描く。
そんな墓が、この谷に現時点で60はあるという。

だが、5日間、カイロやルクソールの他地域で、あまりにも多くのパワーのイメージを見続けてきて、
正直、ちょっとおなかいっぱいです〜という状態になってきていた。
それが、「王家の谷」のすぐそばにある「高貴な人々の谷」や「職人の谷」に行ったときは、
前者にはみられないような、日常の人々の生活の様子が描かれていて、とても興味深かった。

前者は王に使える高官たちの墓で、後者は墓を建築するエンジニアーや石工、画家たちの墓である。
その隣には職人たちの住居跡があった。

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農耕をする人々や墓づくりの様子やフェスティヴァルや宴会の様子などが生き生きと描かれていた。
ぶどうが天井いっぱい覆っていたり、満天の星空が天井を埋め尽くしていたり、妻との仲睦まじい様子が描かれていたり、ワインをふみつけて絞り出している人がいたり、おどりくるってトランス状態になっている様子が描かれていたり、サルが供物を盗み食いしていたり。。。
明るく楽しいイメージが部屋いっぱいにひろがっていて、墓室というより、子供部屋のようなところさえあった。

壮大なピラミッドや神殿は、たくさんの奴隷たちが下働きをしたという見方は、
ハリウッド映画がおしつけた偏見だ。
そうではなくて、技術と誇りをもった技術者や芸術家たちが携わったのである。

給料が与えられ、時にストライキもした事が記録からわかっているそうだ。

あの偉大なピラミッドもカルナック宮殿も彼らのような人々が作り上げたのだ。
この高官の谷や職人の谷に連なるひとつひとつの墓室をみていると
紀元前の人々のプロフェッショナルな仕事ぶりや生活ぶりがまるできのうの事のように思えて、
なぜか、目が潤んでしまった。

色で満ちた生の世界から外にでると、今度は砂が吹く単色の現世が待っていた。

そして、ふと思う。

わたしがみた色鮮やかなすばらしい芸術は、生きている人々の鑑賞のために描かれたのではない。

本来は厳重に閉じられていて、あの世に属ずるもの−死者のためだけの隠された表現なのだ。芸術の意味や役割がわたしたちとは根本的に違うのだろう。

 

ルクソールの観光王道は「王家の谷」だが、ここまで足をのばしたなら、すぐ隣にある「高貴な人の谷」や「職人たちの谷」にも、ぜひ訪れてください。

墓室内では、撮影禁止なので、ここでご紹介する写真はネットから借用してきたものです。