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カラヴァッジオと十字軍

ロンドンのシティーに、オーダー・オブ・セントジョンという博物館がある。
11世紀から病院があった所で、ミュージアムはその歴史を物語っている。

現在、ここに一枚だけカラヴァジオの絵が架けられている。
もちろんホンモノだが、この博物館の所蔵品ではない。
アメリカの個人コレクターからの長期貸し出しだという。

カラヴァッジオのフォロワーのわたしとしては、普段はみることができない彼の絵に出会えるなんて願ってもないチャンスだった。DSCN5722

その作品「いかさま師」は、
注意しないとわからないようなところに、さりげなく架けられてあった。

隠れた博物館でこっそり巨匠の作品を独り占めできるこの贅沢!

ああ、カラヴァッジオ、カラヴァッジオである。

作品自体の鑑賞もさることながら、
「美術」作品がなぜこの「歴史」博物館にかけられているかということにも、とても興味を覚えた。

今回のエントリーでは、あえてそのことを話したい。

謎を解く鍵は、「マルタ島」である。

 

博物館がテーマとして扱う「セントジョン病院」は、エルサレムへの聖地巡礼や十字軍と深いつながりがある。

病院は旅の途中で傷ついたり病気になった巡礼者たちを癒すために作られたものだったが、その本拠地はエルサレムにあった。
ロンドンのこの病院はいわば分館だ。

「病院」と便宜上書いてしまったが、近代的な病院という施設がまだ確立されていない、うんと昔の「騎士の時代」の話である。

11世紀、エルサレムはオスマン帝国の土地になった。
キリスト教の聖地をイスラムの手から取り戻そうとして起こったのが、ご存知「十字軍」だ。
イギリスの王族や貴族たちも率先して従軍したり、深く加担している。

2-3世紀にもおよぶ聖地を巡る長い戦いも、十字軍の撤退という形で幕を閉じるのだが、
エルサレムにあったセント・ジョン病院本部も、最終的によりヨーロッパに近いマルタ島に拠点を移すことになった。

かたや、カラヴァッジオの方にもマルタ島と深いつながりがある。

時はおくれて、16世紀のローマ。
美術界の寵児になっていた売れっ子カラヴァッジオは、ガラッパっちな性向の持ち主でもあった。
あっという間に大作を描きあげたら、2-3ヶ月ローマの下町をほっつき歩いて、飲みほうけたり、喧嘩をしかけたり・・・
乱闘のあげく、ついに人を殺めてしまう。
セレブリティーが突然お尋ね者になったのだ。

そうして、逃げてきた先がマルタ島であった。
その逗留中に絵の注文をうけて描きあげたのが、この「いかさま師」だ。
ある意味、自虐的な自画像なのかもしれない。

博物館のストーリーとカラヴァッジオの一生が、マルタ島でぴたっと重なる。
そのことがわかってから、再び鑑賞したら、より興味が広がったのはいうまでもない。

もうひとつ、この博物館でおっと思ったことがある。

それは、館の入り口に、アラブ語のパンフレットがおいてあったことだ。
現在のロンドンには、たくさんのイスラム教徒たちが住んでいる。
イスラムと戦ったキリスト教十字軍と深く関わる病院を、どう中立的に描いているのか、
どのように現在のイスラム教徒たちに語ろうとしているのか、
この博物館には改めて来なければと思った。


 

 このブログは、アートローグのディレクターによって書かれています。

アートローグは、ロンドンを拠点にユニークな文化の旅や日英のミュージアムコーディネートの仕事をしています。

例えば、「歴史散歩:中世の騎士団と修道院の世界」では、上記の博物館がはいっています。

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