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イアン・マッケランに会いました

ラッキーなことに、先日、ロンドンの地下鉄の中で、名俳優のイアン・マッケランに会ってしまいました。

マッケランといえば、有名なのは、「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビット」のガンダルフ役です。

事の次第をかいつまんで書いてみます。

Ian McKellen

 

バンク駅から地下鉄に乗り込み、すぐに席をみつけて座った。私の後から、老人が入ってきた。

発車した瞬間に、彼はよろっとした。黒いコートの裾が擦り切れていて、一瞬、浮浪者かと思った。

その人は私の目の前に座った。とても雰囲気のある人で、勝手にわたしの観察が始まった。

歳は70代くらい。でもしっかりした体格で姿勢がいい。

青いきれいなスカーフをふわっと首に巻いて、それが白くカールする髪に合っている。

片手に本だけもって、目をつむっている。シワだらけだけど大きな手、爪はきれいに整えられている。

なんとなく誰かに似てる・・・イアン・マッケランみたいだ。

でも、まさか、有名人が地下鉄には乗らんだろう。しかも、帽子もサングラスもかけてない。

本人に聞けば、「よく似てるって言われるですよ」って返されて、オシマイかも。

 

それにしてもオシャレ。

品のよい黒い靴。襟の中で首に直にまいたスカーフが少し色っぽい。

最初に裾が擦れていると思ったコートも、実は、そういうデザインなのだ。

 

数駅過ぎたら、若い男性が入ってきて、老人の隣に座った。

その男性は、老人が気になりだしたようで、チラチラっと横目でみてる。

一瞬、老人が顔をあげた。

若い男性は意を決したように、老人に声をかけた。・・・あ、聞き取れない。

でも、お互いに笑みをかわして、なんと握手をしたのである。

そうか、やっぱりあの俳優なんだ。

 

男性が降りた後、また数駅したところで、今度は子どもたちの団体が同じ車両に入ってきた。

わたしは、きっと誰かが気づくに違いないと、ドキドキしながら待っていた。

でも、誰も気づかない。先生たちも気づかない。自分たちのことで精一杯。

老人の方といえば、なんと、その団体から顔を隠すこともなく、逆に、しっかり顔を上げて、子どもたちの様子を見つめている。

この時はじめて、わたしの目の前の人はイアン・マッケランだと確信できたのである。

 

次のサウス・ケンジントン駅はわたしが降りるところ。こどもたちもそこで降りた。

電車はマッケランを乗せてさらに西に走っていった。

声をかけれるべきだったのか。サインでももらえばよかったのだろうか?後ろ髪ひかれる思い。

でも、30分くらい、真正面で彼を観察することができて、1日ニヤニヤしていた。

 

実は、わたしはマッケランのご近所さんだ。

我が家の近くにある パブ を共同経営している。その隣が彼のロンドンの住まい。

だから、いつかきっと会えると思っていたが、地下鉄の中で実現するとは思いもよらなかった。

そのパブで他の客からマッケランの事を聞いたことがある。

 

マッケランは、よく小学校などに出かけていって、啓蒙活動をしているそうだ。

子どもたちに話すのは、セクシャル・マイノリティの事。

同性を好きになる子もいるんだよ、それは間違ってはないし、そういう子も受け入れて欲しい、

そういう子自身は自分を責めないでプライドを持って欲しい、と伝えて回っているのだそうだ。

彼自身が子供の頃に傷ついた体験があるからなのだろう。 ゲイである彼にとって、60年前はもっともっと生きづらかっただろう。

マッケランの話を聞いていた子どもたちの中には、心に響く子もいただろうけど、

多くは、このおじいさん何の話してるんだろうって、あまり関心がなかったようで、

しかも、スピーチしている人がガンダルフと結びついている子も少なかったらしく、

だから、突然、マッケランが、ガンダルフの口調で話し始めたら、

みーんな、一瞬で心奪われたそうだ。

 

地下鉄の中での子どもたちの様子をみて、そのパブ話を思い出してしまった。

イアン・マッケラン、長身で澄んだ眼をした紳士でした。

Sir Ian MaKellen