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女性の半身をもった古代王:エジプト博物館カイロ

カイロの中心地にあるホテルに着いたのは朝6時前。

一休みして、わたしたちの旅を宿から徒歩圏にある「エジプト博物館」から始めることにした。

クラクションを鳴らして猛スピードでとばしてくる車の流れを必死にかわして、

広い道路を渡ると、タフリール広場があった。

2014年のエジプト革命の時に運動の拠点になり、TVカメラが何度も映し出していた。

その向こうにそびえる赤茶色の西洋風の建物が目指す博物館だ。

800px-the_egyptian_museum

厳重なセキュリティーをくぐって中に入ると、欧米のミュージアムに慣れている目からは、ケアが行き届いていないことがすぐ目についた。

だけど建物自体は大英博物館のサイズに負けてはいない。

しかも、そのほとんどが、古代エジプトのお宝で埋め尽くされている-

古代エジプト文化/美術については文字通り世界最大級の博物館である。

 

朝食を摂っていなかったので、ミュージアムカフェでまず落ち着いて、

エネルギーを得てからいざ出陣という計画だったけれど、

館内で簡素なフロアーマップをみてもカフェらしきものが見当たらない。

そればかりか、展示についてのラベルも解説文もほとんど見当たらない。

一緒にいった友人は、情報がないのがフラストレーションだとしきりに文句を言っていた。

だが、覚悟を決めて、自分たちの感性だけで動き回ろうと決めた。

古代エジプトについては、大英博物館でちょっとは勉強しているので、

ある程度歴史背景やシンボルの意味は心得ている。

知識のフックがあるなら、むしろ感性が赴くままに、

お宝の中を動きまわるのも、知的感覚が研ぎすまされていいかもしれない。

わかることなら友人にも教えてあげられる。

 

果たして、大英博物館にはないようなさまざまなユニークなものをみることができた。

有名なツタンカーメン王の黄金のマスクや棺はそのほんの一角でしかない。

3000年の歴史を通しての表現の多様性は驚くばかりだ。

なかでも、わたしにとって興味深かったものは、

文化的革命王といわれる「イクナートン」にまつわるものをたくさんみたこと。

イクナートンは決して王の像によくある理想的な美男子として描かれていない。

細長くて、頬骨が高くて、あごがつきでている。

離れたところからも彼の顔だと気がついた。

pharaoh_akhenaten Wikipedea

ところが、近づいていくとなんと、さっきまでは視界が遮られて、胸から下がみえなかったのだが、

その下半身はどうみても、グラマラスな女性のものだ。

腰周りはぐーっと極端にくびれて、臀部は埴輪の女性像のようにずんぐりしている。

え、ほんとうにこれ「イクナートン?」と、思って、たまたまそこにはついていたラベルをみたら、やはりそうだった。

面白い!

間違いなく故意にデフォルメされているわけだが、

だとしたら、男性王を女性的に描くことにはどんな意味や背景があるのだろうか?

この巨大な博物館を見回しても、こんな像はみたことがない。

(館内で写真が撮れなくてごめんなさい)

周知のように、エジプトの宗教はその長い歴史を通して多神教だった。

その中で、イクナートンは、太陽神アムンを中心とした一神教にかえた革命児だ。

当然ながら、伝統を守ってきた神官や高級役人からは疎まれた。

イクナートンは平和主義的な王であり、他国に脅威を与えることをよしとしなかった。

これも、軍人を中心とする多くの上流階級には面白くないことだった。

その結果、暗殺されたとされている。(その後継者があのツタンカーメン王)

だが、イクナートンの時代は特異な文化が花開いた。

その数々が、この博物館の最も奥にある重要な部屋に集まっているのだ。

思えば、エジプト旅行を決めたのも、1年半頃前に、「イクナートン」をテーマにするオペラをみたからだった。

その時、イクナートン役をしたのは、カウンターテナーという女性のように高い音域をこなすシンガーだった。

その妻、絶世の美女の王妃ネフェルティティ役は、ソプラノではなく、低い声のアルトであった。

でも、そのジェンダーと声のクロスが非常に美しいハーモニーをつくった。

オペラの総合芸術性:フィリップグラスのイクナートン

 

今日、この地にきて、イクナートンとネフェルティティの両性が融合する似姿を目にして、

しばらく感慨にふけっていた。

 

宿に帰ってから、同宿の海外旅行者たちと話していたら、

ほとんどが、意味も何もわからず膨大な数の考古品をみてまわるだけだったという。

情報不足はむしろ全体的体験を損ねるものだろう。

せっかく世界規模の博物館にやってきて、もったいないことだ。

適切な量のわかりやすい解説が必要だ。

そのほかにも、カフェがないことなど、

ミュージアムマネージメント的に改善すべきところがたくさんあった。

だけれど、現時点でのエジプト政府にとっての難題はなんといっても運営資金に違いない。

人々がいうには、2014年の革命以降、観光客が激減したという。

エジプトは観光立国であることを思えば、かなり厳しい状況なのだろう。

この博物館が少しでもよくなることを祈りつつ、

最後にこれから旅する人のために覚え書きをかいておくことにする。

 

<エジプト博物館へ行く人のための覚え書き> 2017・1月
1 カメラはもって入れず、セキュリティーに預ける

2 カメラを利用するならば、入場料とは別にチケットを買わなくてはいけない (EP 50) わたしは後でガイドブックを買えばよいと思ったが、なんとショップに英語も日本語もガイドブックがなかった!だからカメラチケットを買った方がよい

3 博物館に入る前にガイドを雇うのも一案。だが、知識と経験あるよいガイドを探してほしい。悪いガイドだと、ハイライトだけつれていって、ちょっと何かいっておしまいということもあるらしい。だが、よいガイドなんてどうやってわかるのだろう? それが問題だ。

4 かなり広いのにカフェもレストランもない。博物館の周囲にも入りやすいカフェやレストランがない

5 エジプト博物館には入場料とは別に王族のミイラの部屋に入るときには特別チケットがいる

6 博物館建物内にはトイレはない