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スロヴァキアの小さな陶磁器ミュージアムのこと

スロヴァキアの首都ブラティスラヴァと、ウィーンにいってきました。
2から3回にわたって、尋ねたミュージアムについてお話したいと思います。

まずは、ブラティスラヴァ郊外のワインの町、モドラにある小さなミュージアム。
この町は色鮮やかなマジョリカ陶器でも有名で、たくさんの工房があります。
町のInfoで入手した地図に、陶磁器のミュージアムが紹介されていたので、
ランチの前に足を伸ばしてみることにしました。

小雨降る中、地図を頼りに歩いていくと、まるで要塞のようながっちりとした茶色の建物が見えてきました。
どうやらあれが目指すミュージアムのようですが、看板にはホテルとでています。
首をかしげながら近づくと、たしかにミュージアムでもあるようです。

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ははぁ~、ホテルが経営する商売目的のミュージアムか、あんまり面白くないかもしれないな、
というのが最初の推測でした。
レセプションで、ミュージアムを見たいのだと告げると、こちらですと部屋の電気をつけてくれました。
なんの変哲もない扉を開けると、時間が止まったかのような工房の中。
いるのはわたしたちだけ、最初の推測は、どうやら間違っていたようです。

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部屋の真ん中には、かつては忙しく音を立てていたであろう砕石機が埃をかぶっています。
部屋を見渡すと、水を混ぜるための大きなシンク、足で蹴るタイプの大きなロクロ、50年代式の赤いバイクが目にはいってくる。ふと窓際に目をやれば、陶磁器作品といっしょにレーニンの頭像が射し始めた光のなかにあります。

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ミュージアムらしきものがあるとすれば、壁際のガラスケースぐらい。
棚には初期のあまり色づけがなされていないシンプルな陶磁器や、当時の写真が無造作に置かれているだけ。

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建物のさらに奥に入っていくと、炉釜や作業場がありました。どの一角をとっても、まるで、つい昨日まで作業をしていたのに、急に時間が止まったかのような様子です。写真から伝わるとよいのですが。

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簡易階段があったので、わくわくしながら2階へあがっていきました。
そこには天井まで届くような棚が並んでおり、出来上がった陶磁器や型が置かれています。
工房だったときも、ミュージアムとしての今も、陳列棚として機能しているのです。

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ここがかつて工房であったことは、もはや疑いもありません。
ならば、なぜ、ホテルになったんだろう。その経緯に興味を覚えます。
いや、ホテルになったのはよしとして、なぜ、ホテルの経営者がここを残したのかが、むしろ気になるのです。
これだけのスペースならば、客室がいくつも入るだろうに・・・。

階段をさらに上がっていくと、
やはり有名な陶芸家を輩出した歴史ある工房であったことがわかりました。
工房は町の郊外に移転し、ホテルが建物を買い取ったとのこと。
要塞のような建築も伝統的な工房の特徴なのです。
ホテルの名前は、ある陶芸家の名前にちなんだもの。
それらのことから、ホテルの経営者の伝統に対する敬意が感じられます。
工房をつぶさないで、ミュージアムとして残したのも、その思いと繋がるのかもしれません。

しかし、ミュージアムにするなら、もう少し手をいれて、もっと訪問客が入るようにしたり、
ついでに陶磁器のショップなど置くのが、常道だと思うのですが、そのようにもなっていません。
いや、わたしにとっては、手前勝手ながら、このような空間だからこそ、感慨深いものがあったし、逆にいえば、heritageのあり方を考えるきっかけにもなりました。
この中途半端に忘れられた時間の隙間は、いったいホテルの経営者の考えに沿ったものなのか、
ただ単に、手かお金が回らないだけなのか、そこには、社会主義から資本主義への社会的移行の影響があるのか・・・。
なにより、次に尋ねるときには、このまま残っているのだろうか・・・、
そんなことを思いながら、再びばらつき始めた雨の中、傘をさしてワイナリーに向かいました。

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このブログは、アートローグのディレクターによって書かれています。

アートローグは、ロンドン現地にて、ユニークな文化の旅の企画・ご案内や日英のミュージアム・コーディネートの仕事をしています。

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