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フランシス・ベーコンとピカソ

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ロンドンのテート・ブリテンで、「ピカソと近代ブリティッシュ・アート」展が開催中です。
この展覧会は2つのストランドで構成されています。
ひとつは、ピカソが英国でどのように紹介され、評価され、あるいは批判され、受容されてきたかを、
1910年代、20~30年代、40~50年代に開催された展覧会から読み解いていくもの。
もうひとつは、7人の英国人アーティストたちがピカソからどのように影響を受け、それを消化し、
自らの新たな創造性につなげていったかを探るものです。

後者は美術展でよくあるアプローチですね。
予想される作家たち、例えば、ベン・ニコルソンやヘンリー・ムーア、デビット・ホックニーの名前も浮かびます。
彼らの作品がピカソ作品と比較しながら並列されているのは言うまでもありません。

そのなかで新たな発見だったのは、フランシス・ベーコン
(彼はアイルランド人でブリティシュアーティストではないのですが、まあ、ロンドンで活動したから含まれているのでしょう・・・)が、ピカソの影響を受けていたことです。
ベーコン作品の作風からピカソの影響は思いもしなかったので、わたしとしては驚きでしたが、
ピカソの作品を見た後、ベーコンの作風がガラッと変わったというのです。

展示室に並んだふたりの作品をみていくと、
確かに、ピカソの海岸に戯れる人物シリーズに描かれたポリープのような人間のフォルムは、
ベーコンの「キリスト磔刑図」などの奇怪なまでに歪曲した塊にとても似ています。
モデルの感情は正反対ではあるけれど。
人間の感情をいかに表出させるか考えあぐねていた若いベーコンは、
ピカソの抽象的な人物像をみて、頭の電球がぱっと明るくなったのでしょう。

しかし、ベーコンが他の作家たちより優れているのは、それをまるまま写し取るのではなく、
あの人間の内面をまるで外側に裏返すかのような、ベーコン独自の表現にもっていったことです。

だから、わたしもベーコンがこの展覧会にあるなんて予想だにしなかったんだろうな。

展覧会全体を振り返ってみると、わたしにとって興味深かったのはこのピカソとベーコンのコーナーでした。
もうひとつ面白かったのは、第一のストランド、つまり、英国におけるピカソの受容の変化。
それが第二のストランドであるブリティッシュ・アーティストたちへの影響と、交互に構成されていることです。
それによって、ピカソが英国の美術界や社会全体に与えたレガシーを有機的に理解できるようになっていました。

そのように、確かに興味深い側面もあったのですが、
展覧会としての印象は散漫なものだったというのが、正直なところ。
その理由は、複数の比較がそれぞれ同じボリュームをもって提示されていたからではないかと考えます。
展覧会の構成がいわば平坦なままで、主体である来館者が入り込んでいけるつくりにはなっていない。

また、ある作品を鑑賞するにしても、どうも、他との比較の方が先にたち、
(もちろん展覧会がそれを促しているからですが)、
ひとつの作品として集中して観ることを時に邪魔してしまい、アンビバレントな気分にさせられるのです。

今回の展覧会を準備したキュレターたちの努力、
当時の資料を研究し、分散した作品を集め、構成したその努力は、なみなみならぬものがあったでしょう。
だけれど、来館者にとっては、やはりひとつの体験に集約され、見学後も余韻として残ります。
どこか面白いところが一箇所でもあればよいではないかという声もごもっとも。
このような新しい切り口でピカソを振り返ることにも、もちろん学術的な意味があります。
こちらを立てれば、あちらは立たず。
展覧会をつくるのは、たいへんな作業だとつくづく思う次第です。
とりとめもないまま。

‘Picasso & Modern British Art’ at Tate Britain   ~15/07/2012


 

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