中国からの新しい風@ヘイワード・ギャラリー

地下鉄の大型ポスターを目にした時、写真だと思っていた。
スケープボードに乗った若者が、後ろにつんのめった瞬間、
あるいは、ラップダンスの宙返りの瞬間を捉えたものかと。

カーテンが開くと、その覚えのあるイメージが目に飛び込んできた。
しかし、部屋の中央にあるのは、実際の人だった。
凍りついたまま動かない。手も足もびくともしない。
瞬きしたから、生きている人だとわかったのである。
片足だけ地面についたまま宙刷り状態のありえない姿勢。なのに、びくともしない。
まずはショック。次ぎに、どうなっているんだろうと、彼女の周りを歩き出す。
ピアノ線？　いや。たぶん、フーディーやだぶっとしたスラックスの下に支えがあるにちがいない・・・
などと、考える。

しかしすぐに、そのようなマジック証しは、どうでもよくなる。
奇妙なのだ。そして、どこか可笑しいのだ。
中にはいっているのは、若者ではなく、初老の女性だ。表情も全くない。
その、服装と姿勢と、実際の人物のあいだのギャップ。
その人物＝作品を中心に、不思議な顔つきで見る人々とのギャップ。
そして、瞬間と永遠のギャップ。
実にストレートで力強い表現だ。
中国の新進のアーティスト、Xu　Zhen　の作品。
「In Just a blink of an Eye」である。