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「第三の男」とウィーンのアイデンティティ

20うん年ぶりに映画「第三の男」を観ました。
光と影の映像美や、墓地での長いカットシーン、すばらしい音楽が強く印象に残っています。

今回は、3ヶ月ほど前に訪れたウィーンの思い出と照らし合わせながら鑑賞することができました。
プラーター公園の大観覧車の名シーンについて言っているのではありませんよ。いえ、むしろウィーンの街全体です。
はじめて観たときは、第二次大戦の敗戦国の首都ウィーンがアメリカ・イギリス・フランス・ロシアに四分割統治された背景を少ししか理解することができなかったのですが、
この犯罪事件が、かつてヨーロッパ一の栄華を誇ったウィーンの街が破壊されたそのショック、アイデンティティーがずたずたに引き裂かれた都市で繰り広げられた出来事だった事がよくわかったのです。

というのは、訪れたウィーンの街は痛みの跡も残らぬほどに修復し、文化都市としての誇りを取り戻し、クリムト生誕150周年記念展などにみるように、ウィーンのアイデンティティーを強く感じることができた。それに照射する形で、「第三の男」に現れたウィーンの街の悲哀が、甘いシターの音とともに流れてきたのです。
本当の主人公は、名優オーソン・ウェルズ演じる「第三の男」ではなくて、ウィーンの街そのものかもしれない。

先回は見逃してしまった興味深い面をみつけることもできました。
たとえば、オーソン・ウィールズの演技も改めてすばらしいと思ったけれど、彼が住むアパートのおばあさんもよかった。
4つの国の治安部隊や警察が、土足で彼女の静かで豊かな生活をかき乱すことに対し抗議の声をあげる、その怒りや誇り高さがよく響いてきた。
前は小うるさいばあさんにしか見えなかったけれど、
今回は、誇りを失わないウィーンの気概を体現する重要な脇役にみてとれました。
第三の男の元恋人で、チェコスロバキア出身のアナの役は、もっと複雑でしょう。
そこには戦前からの、オーストリア帝国とチェコスロバキアの関係も横たわっているに違いありません。
それを理解するには、もっと勉強しないといけないのだろうけど。

爆撃によってめちゃめちゃに破壊された地上と、巨大な地下水道の対比も実に面白い。
あの地下水道は、過去のウィーンの力を象徴しているとも、あるいはナチスの陰とも読み取れます。
第三の男がその地下水道で追跡にあい、結局地上にでることなく殺される事にも、なにか意味があるのかもしれません。

すでに観た映画でも、その舞台となった土地を訪れてから再び鑑賞すると、さらに感慨深いものになるよい例でした。
そして、もっともっと読み解きたいと興味がそそられる。名画とはそういうものなのでしょう。

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